かつて街中にはゲームセンターが数多くありました。大型のショッピングモールにはメダルゲームや音ゲー筐体を設置したゲームセンターが必ずと言っていいほど存在していました。
しかし、近年これらのゲームセンターは姿を消しています。大型のアミューズメント施設のようなところは除いて、中小規模のゲーセンは急速に数を減らしています。
ゲームセンターの数が激減したのは時代の流れ以外にも原因があります。
今回はゲームセンターがなぜここまで数を減らしたのか、その要因に迫ります。
10年で8000軒が閉店
帝国データバンクの記事 (元記事)によると10年で8,000店舗が減少し、直近5年で3割のゲーセンがなくなっているようです。
ゲーセン文化が若者に大流行した1990年代をピークに、2010年以降は徐々に減少の一途をたどっていましたが、2020年から急速に閉店する店舗が増加しました。これはおそらくコロナの流行による外出自粛が原因だと思われます。
地元で愛されていた老舗のゲーセンから、全国的に有名な大型のゲームセンターまでコロナに自粛の余波は広がりました。
ゲーセンの経営はコロナの流行によってとどめを刺された形でしたが、昨今のゲーセンにはそのような外出自粛に耐えるほどの体力がなかった理由があります。
閉店の理由
コロナの流行
2020年以降のコロナの世界的な流行はエンタメ業界にも大打撃を与えました。日本中が自粛ムードとなり、特に、室内に多くの人が集まるゲームセンターは必然的に嫌厭されました。
常連などの支えでこれまでなんとか経営を保っていたゲームセンターはコロナをきっかけに次々に店を畳むことになりました。外出自粛をきっかけに家庭用のゲーミングPCも一気に普及し、かつての「ゲームといったらゲーセンでやるもの」という考えは「ゲームと言えば家でやるもの」という常識へと変化しました。
家庭用ゲームが普及したことにより、かつては頻繁に開催されていたゲーセンでの大会やイベントも、その数を減らさざるを得ない状況となりました。
自粛ムードは3年以上続き、コロナが収束してからも客足は戻らずに、ゲーセンの店舗数は今でも減少し続けています。
電気代の高騰
コロナ以降も電気代の値上げが続いています。ゲームセンターは大量に電力を消費するので電気代の高騰はかなり経営を圧迫します。
さらに昨今の物価高と円安もあり、ゲーセンの運営費用は増加しています。その一方で、基本プレイは1クレジット100円という基準が定着してしまっているので、なかなか値上げに踏み切れないという葛藤があります。
もはやかつてと同じ値段設計では経営が立ち行かなくなっている業界ですが、1クレ100円という常識を打ち破る必要があり、かなりハードルが高くなっています。
娯楽の多様化
コロナによって家でゲームをする人が多くなりました。
しかし、それ以前から「ゲームはゲーセンでする」という文化は崩壊しつつありました。
いまではスマホで無料でゲームができるし、ネット環境が整っている家庭も増えました。APEXのような基本無料のゲームで何百時間と遊べるのに加え、ネットで対汚相手はいくらでも見つけられる時代になりました。
だれかとゲームをするのにもゲーセンに行くよりも手軽に、安くできるようになったのです。
ゲームセンターにしか置いていないゲームの数も減りました。
かつてはゲーセンの筐体でしか遊べなかった格闘ゲームやレースゲームも今は家庭用のソフトが発売されており、ゲーセンの筐体のようなコントローラーも購入できます。
ゲーセンでしか遊べないゲームはクレーンゲームや音ゲーやメダルゲームくらいになってしまいました。
採算の合わなさ
そうしてゲーセンのアイデンティティがなくなってしまいましたが、残された音ゲーやメダルゲームにも課題があります。
音ゲーのようなタイプの筐体は基本的に1クレジット100円なので、1時間ずっと遊んだとしても1,000円~1,500円ほどしかかかりません。
遊ぶ側としてはコスパのいい遊びですが、経営側からすれば非常に苦しいものだと断言できます。
ゲーセンの筐体の稼働率を考えれば、一日稼働させて1台当たり5,000円も稼いではくれないでしょう。
そこから人件費や電気代、維持費を差し引かなければならないので1クレ100円の筐体だけでは当然経営は成り立ちません。
メダルゲームの場合、10枚で100円のところが多いようです。遊び始めでメダルの枚数が少ないうちは高い利益率を上げることができます。
しかし、メダルゲームには貯メダルというシステムがあり、一定期間獲得したメダルを預けておくことができるサービスです。
貯メダルによって多くのメダルをためている人は新しくメダルを交換することがないので、一切店に金を落とさなくなるのです。
このように筐体やメダルゲームの採算が合わないので、
ゲーセンの経営のほとんどはクレーンゲームによって支えられています。
クレーンゲームは利益率が非常に高く、またクレーンゲームの景品限定商品も多数あります。ゲーセンが誕生した1990年代や2000年代よりもアニメが広く普及して、限定のアニメグッズの需要がかなり高くなっています。
大手アミューズメント施設のラウンドワンも大規模クレーンゲームコーなーの設置に力を入れています。
かつてのストリートファイターIIの筐体が立ち並んだゲームセンターは姿を消し、これからはクレーンゲームが広がるゲームセンターが見られるでしょう。
抱き合わせ販売
ゲームセンターの経営が苦しいのは単にゲーム筐体の利益率が低いからではありません。
高額な筐体の購入費用だけでなく、メーカーの抱き合わせ販売も問題でした。
人気ゲームの筐体を設置するためには、そのメーカーの別のゲームの筐体も購入しなければならない所謂「抱き合わせ販売」がゲーセンでは横行していました。
ゲーセン業界はメーカーのほうが立場が強く、ビジネス上対等な関係でない取引では抱き合わせ販売は珍しくないようです。
メーカーは家庭用のゲームも開発しているため、ゲーセンがなくなっても被害は小さいので未だに抱き合わせはなくなっていないようです。
まとめ
今回はゲーセンの店舗数が減少している原因について解説しました。
電気代の高騰、採算、家庭用ゲームやソシャゲの普及、抱き合わせ販売による経営の圧迫はコロナの流行によってとどめを刺された形になります。
今後もこの流れは止まらず、ゲーセンの閉店は増えると考えられます。
これからゲーセンが盛り返すためにはゲーセンでしか体験できないゲームを設置したうえに高い利益率を維持する必要があります。
そのような革新的なゲームが生まれるのか、時代の流れとともに姿を消していくのかは分かりませんが、一時代を築いたゲーセン文化には頑張って生き残ってほしいように思います。
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