2018年にeスポーツが注目され始めて5年以上経ちました。当時ほどの勢いはないものの今でも盛り上がりを見せています。
極端なブームも落ち着き、ようやく受け入れられてきたように感じます。
当時から今に至るまで、様々なeスポーツチームが生まれ、様々な大会やイベントが生まれ、様々な選手が生まれてきました。そして同じくらい多くのチームや大会が消えています。
最近は一時のブームも落ち着き、イベントの乱立もなく、ゲーミングチームも地に足がついてきたように思われます。 黎明期だった数年前と比べるとeスポーツイベントの数が減ったのは何故でしょうか。 今回は闇に包まれているeスポーツイベントの興行とその収益形態について解説します。
eスポーツイベントは儲かるのかー
eスポーツイベントのが以前より減っていることからも推測できる通り、
eスポーツのイベントで収益を上げ続けることは非常に難しいです。
イベント収益は「参加費」「観戦費」「グッズ売り上げ」に分類できます。
eスポーツに関わらず、イベントの収益の多くはグッズの物販による売り上げが占めています。
eスポーツのイベントはコンテンツがゲーム会社に帰属するため、大会運営が勝手にゲームのグッズを販売できません。販売可能なのは選手関連のグッズにとどまりますが、eスポーツプレイヤーの知名度では物販だけでまとまった収益をあげるのは難しいのが現状です。
ゲーミングチームのユニフォームや選手のグッズを売って収益を安定させるためには、長い年月と莫大なコストをかけてチームのブランディングを行っていかなければならず、2025年現在のeスポーツ市場規模では、その投資コストに見合うほどの売り上げは見込めません。
国内でチームのグッズが売れるのは「ZETA」や「CR」のような超強豪のチームだけでしょう。
グッズによる売り上げが難しい一方で、eスポーツならでは収益もあります。
それが配信による広告収入です。
eスポーツイベントは動画配信サービスとの親和性が高く、YoutubeやTwitchでイベントの様子を配信し、視聴者数 (広告表示数) によって収益を得ます。
TV放送の放映権に比べると微々たる金額ですが、eスポーツイベントの運営を支える重要な収益源です。
そのため、現在のeスポーツイベントの収益は観戦料と動画配信による広告料に依存しています。
ただ、観戦料金はイベントの箱以上の集客は見込めず、払い戻しのリスクもあるため、大きな稼ぎになりにくいのです。
配信による広告収入は一人当たりの単価は低いですが、人気コンテンツになると収益は青天井です。しかし、どれくらいの収益があるのかを事前に予測しづらいという欠点もあります。
イベント会場での観戦料 (入場料) は一人当たりの単価が高く、事前に売上の予測が立てやすいというメリットがありますが、売上に上限があります。
現地観戦料:単価は高い。会場以上の収益は見込めない。
イベントのさらなる制約 利用規約
eスポーツのイベントを行うときの一番のハードルがゲーム制作会社による利用規約です。
参加費を徴収してゲーム大会を運営する場合、ゲームの版権元に許諾を取らなければいけないケースがあります。
ゲームコンテンツの権利は当然制作会社に帰属するため、制作会社の利用規約に従わなければなりません。
一見、「eスポーツイベントの開催によってゲームの宣伝をしているのだから、ゲーム制作会社から支援があるはず」と思ってしまいますが、実際は真逆です。
コンテンツの利用料金を支払うことでイベントでの使用を許可されるケースも多く、利用料金が不要な場合でも「参加費を○○円以上とってはいけない」「賞金を○○円以上だしてはいけない」などの各ゲーム会社のガイドラインに従わなければいけません。
ここで大手ゲーム会社のガイドラインを見てみましょう。
Riot Games
「LoL」や「VALORANT」を制作したRiot Games社はeスポーツコミュニティに最も有効的な会社のひとつと言えるでしょう。
上記ふたつのゲームは世界的に流行しており、ともに基本プレイ無料なのが特長です。
基本プレイ無料という敷居の低さから、大会の視聴者がゲームのプレイヤーになりやすいため、大会シーンの盛り上がりがゲームのプレイ人口に直結します。
そのため、自社で大規模大会を主催するだけでなく、eスポーツコミュニティにも積極的に寄り添っています。ガイドラインに則って大会であれば、申請すればRiot社からサポートを受けることが可能です。ゲーム内の限定衣装やゲーム内通貨を景品として出せるようになり、中規模以上の大会では資金的援助も行ってくれる場合があります。
金銭面に関して、「VALORANT」の大会ガイドラインは次のようになっています。
- 参加費の上限は20ドルまで
- 賞金総額は小規模大会で2,000ドル, 中規模大会で50,000ドルまで
- 営利目的の開催は原則禁止
カプコン
カプコンは格ゲー最大手のストリートファイターシリーズを手掛ける日本の会社です。
最新作である「SF6」は格闘ゲームとしては数十年ぶりの爆発的ヒットとなり、大会シーンも一気に注目を浴びました。
eスポーツという言葉ができる前から、格闘ゲームは全国のゲームセンターで大会が繁く開催されており、その頃の名残でオフラインの大会もたくさん開かれています。
ストリートファイターの大会は、原則個人開催はできません。
大会を開催したい店舗・法人はカプコンに申請を行わなければなりません。
許諾がとれたら告知画像や広告に認定された画像を載せることが可能になります。
企業でも営利目的のイベントを行う場合はビジネスライセンスを取得する必要があります。企業がイベントで利益を得るためには年間百万単位の利用料金を払って契約します。
ビジネスライセンスでなくても参加費をとったり広告収入を得ることは可能ですが、参加費は大会運営費に当てなければなりません。
任天堂
国内ゲーム会社で最も知名度のある任天堂はeスポーツに消極的であることが知られています。
任天堂のIPを使った場合、営利目的の大会は禁止です。
また、他の会社では一般的に許可されている「企業によるスポンサー」が厳密に禁止されています。
ただし、申請が必要な大型大会(参加者200人以上)以下の規模であればガイドラインに則って開催可能であるため、大会の個人主催ができないカプコンより動きやすいという側面もあります。
まとめ
ゲーム会社ごとにガイドラインは異なりますが、原則として営利目的は禁止であると言えます。
eスポーツイベントがゲーム会社の著作物を借りて開催されている以上、このガイドラインは遵守しなければならず、イベントで収益を上げることが難しい理由です。
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