チートとeスポーツの問題

近頃チートに関係するニュースがたくさんあり、チートへの関心が高まっています。

チート問題やラグ問題はプレイヤーと動画勢で意見が分かれることが多いセンシティブな問題です。

今回はなぜチートが嫌われているのか、何が問題なのかについて解説します。

 

コトの発端

チート問題が今改めて注目されている背景からおさらいします。2024年7月に2件の異なるチート問題が発覚し、大きな話題を呼びました。

1.ひとつはゲーミングチーム「Deltan gaming」に所属する「桃条承太郎」選手。
彼はチート使用者と認識しながらチーターと一緒にApexをプレイしていたことが判明し、チームを除籍されました。
チーターと一緒にゲームをしていたのが性的目的であったことで話題になりました。

 

2.もうひとつがゲーミングチーム「NOEZ FOXX」に所属の「沖縄に行くために」選手。
NOEZ FOXXはRepezen Foxxの「DJふぉい」がオーナーを務めるゲーミングチームで、他のチームでやらかした曰くつきの選手を雇用するという一風変わったチームです。

「沖縄に行くために」もこのチームに所属しており、彼は元チーターとして有名で、Valorantでもチートの疑いによって永久BANされていました。

結局アカウントBANは解除され、オーナーのDJふぉいもチームとして彼を許して受け入れる方針をとりました。
しかし、これを機にチート論争が爆発することになったのです。

ふたつめの事例はかなり業界で話題になりました。
DJふぉいが元チーターの選手を受け入れる旨の発言をしましたが、元チーターが今後もeスポーツに関わっていくことに対して、多くのプレイヤーが嫌悪感を示しました。

一方で、チームNOEZ FOXXのファンやDJふぉいのファンはこのようなプレイヤーたちと真っ向から反発。

過去にチートをした人を受け入れるべきかどうかという業界全体の問題への発展していきました。

※7/29(月),NOEZ FOXXは「沖縄に行くために」との契約解除を発表しました。

NOEZ FOXXが「沖縄に行くために」との契約解除を発表
2024年7月29日にプロチームゲーミングチーム「NOEZ FOXX」が所属選手「沖縄に行くために」との契約を解除したことを発表しました。 「沖縄に行くために」の契約解除と皆様へのご報告 pic.twitter.com/aBx...

 

なぜ対立が起きたのか

なぜ今回のNOEZ FOXXの対応は賛否両論を生んだのか。

それは、DJふぉいのファンであり、実際にはゲームをプレイしない層(いわゆる”動画勢”) と実際にゲームをプレイしてきた層とのチートに対する認識の違いが原因です。

動画勢はeスポーツという産業には欠かせない存在で、eスポーツ業界が大きくなればなるほど動画勢は増加します。彼らはゲームの配信や大会を視聴してくれる一方で、実際のプレイはあまりしないので、競技者(プレイヤー)の目線と異なります。

例えば、オンラインの遅延やラグに対する認識も動画勢とプレイヤーでは大きく異なります。
基本的にゲームはオンラインとオフラインで2~5Fほどの差があり、オンラインのほうがラグがある環境です。
動画勢の中にはそのような遅延の差があることを知らなかったり、大した問題じゃないと思っている人がたくさんいます。一方、プレイヤーはオンオフでの遅延の差やデバイスによるわずかなラグの差の影響が大きいことを知っています。
チートに対する見解も動画勢とプレイヤーとで相違が生まれる部分でしょう。
動画勢はチートが悪いことだと思っていても「過去の行為を追求するほどのことではない」という認識の人が多いです。
しかし、古くからのプレイヤーはチート行為によって多くのゲームが衰退し、なくなっていったことを知っています。なので、チートは「一度でもやったら永久追放」レベルのことであると認識しています。

チートに対する認識の相違

 

チート行為を軽んじてしまうカジュアル層

動画勢やカジュアルプレイヤーがチートに対して軽い認識をしてしまうことも仕方のない側面はあります。
例えば、Apex Legendsはリリース当初からチートが横行しており、今でも数えきれないほどのチーターがいます。チートもネットで検索すれば簡単に買うことができるほど手軽なので、「ちょっとしたズル」と認識してしまう人が現れるのも無理はない状況です。
Apexはチートが多く、過去には世界大会で外部からチートが付与されるという問題もありました。
【eスポーツにおけるチート問題】Apex世界大会で外部からチート付与
2024年3月18日に開催された「Apex Legends」の国際大会 Apex Legends Global Series (ALGS)の北米決勝戦にて、外部からハッキングがなされて参加選手にチートが付与されるという事件が起きました。大会...

 

しかし、チートに対する処罰はかなり重く、上述したValorantでも処罰は「永久BAN」と相当厳しくなっています。
他にも、ストリートファイター6ではチート行為が確認されると「レート没収+約200年のペナルティ」だと言われています
チートはゲームの公平性を著しく損なう行為であり、対人ゲームの中で最も忌み嫌われる行為です。

なぜチート行為は嫌われる?

チート行為は歴史的に多くのゲームを衰退させてきました。

対人戦では対戦相手がいることが最も重要な要素です。
せっかくゲームが面白くてもチートが横行している環境ではプレイヤーは増えません。プレイヤーがいなければそのゲームをプレイする理由はないのでどんどんゲームは衰退していきます。

チート対しては普通のプレイヤーでは絶対に勝てません。実際のスポーツにおける「ドーピング」以上に勝敗に影響を与えます。
さらに、チートと遭遇した健全なプレイヤーは「しょうもなさ」を感じます。絶対に勝てない違法行為者に貴重なプレイ時間を奪われるからです。

そうして、チーターと何人も遭遇するとやがてそのゲームをやらなくなるのです。
さらに、実際はチーターではない人に対しても、「もしかしたらコイツもチーターかも?」と疑心暗鬼にさせてしまう可能性もあります。

そうなれば、もはや健全なゲーム体験はできず、どんどん人はやめていき、最後にはチーターしか残らないという惨状になるのです。

 

どうしたらチートはなくなるのか

このようにチートは界隈のなかでは絶対に許されないような扱いでありながら、なぜここまで根絶できていないのでしょうか。

まず、チートを技術的に根絶することはほぼ100%無理です。

チート問題が起きたときによく「チートできるようなゲームや運営が悪い」という論調を見かけますが、実際、一つのチートに運営が対処してもまた新しく別のチートが開発されるというイタチごっこの状態です。

もちろんチートを放置せず、対応パッチをあてたり、処罰を厳しくしたりと運営しだいで減らすことはできますが、どんなゲームでも完全にチートを無くすことはできません。

技術的にチートを排除できないので、コミュニティで「チートは絶対に許さない」という空気を作り出してきました。
過去にチートした人やチーターとともにプレイした人はプロチームに所属することが極めて難しい雰囲気がありました。それだけに、前述のNOEZ FOXXの対応は波紋を呼んだのです。
影響力のある人物や団体の対応は長年作り上げてきた暗黙の了解を壊すことになるという事実を今回の騒動でコミュニティは実感しました。
今後は雰囲気や暗黙の了解に頼らない方法が求められます。
例えば、他スポーツではドーピングの使用は登録抹消処分の規定があります。これに倣って、プロ団体や運営がチート行為に対して明確な処罰を明文化する必要があるでしょう。
また、より発展したところでは法律で処罰することも検討できるでしょう。

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